13/6/7「受動喫煙と肥満」
13/06/07 19:17 
▼タイトル
「受動喫煙と肥満」

▼本文


日本禁煙学会雑誌の
松崎道幸先生の
受動喫煙が
こどもに及ぼす影響の
論文から抜粋します。

「メタボリックシンドローム」
という動脈硬化の
進みやすい現象は、
過食と運動不足などの
後天的ライフスタイルが
原因だと思われていましたが、
最近肥満になる運命が
ある程度出生前に
決められていることが
わかってきました。

ドイツで、
5,6歳児4,974人の
BMI(肥満度)が
妊娠中の母親喫煙に
どれほど影響されるか
調査しました。
こどもが
太りやすくなる要因である
テレビゲームや
テレビの視聴時間、
食事の内容、
運動不足、
親の経済階層などを
そろえて比べても、
タバコを吸わない母親から
生まれたこどもと比べ、
妊娠中タバコを吸っていた母親から
生まれたこどもは1.70倍、
妊娠初期だけタバコを吸っていた
母親から生まれたこどもは2.22倍
肥満が多いという結果でした。

同じ調査成績は
日本からも報告され、
妊娠初期の女性が喫煙者だと、
生まれたこどもが10歳時点で
肥満になる確率は、
非喫煙者に比べ約3倍高いことが
わかりました。
しかも妊娠4週で禁煙しても
生後肥満のリスクは消えない
という報告があります。

イギリスでの長期追跡調査の結果、
妊娠中喫煙をした母親から
生まれたこどもが
33歳になった時、
糖尿病リスクが4倍になることが
わかりました。

妊娠中の喫煙が
こどもの体重と血圧を増やす
という報告もあります。
746組の母子について、
こどもが3歳の時の
血圧・BMIと喫煙歴を比べると、
母親がタバコを吸わない群の
こどもに比べ
妊娠初期喫煙群のこどもは、
2.2倍過体重
(体重分布の上位15%)で、
収縮期血圧も3mmHg
上昇していました。

なぜ妊娠中の受動喫煙が
出生後の肥満や糖尿病の
原因になるのでしょうか。

戦争中飢餓にさらされた
妊婦から生まれたこどもの
追跡調査から明らかになった
仮説をもとに
次のように考えられています。

母体の栄養不足により
胎児の節約遺伝子が発動する
→自分の出す
インスリンの働きが悪くなり
血糖が下がりにくくなる
→肥満促進

妊娠中の喫煙もまた
胎盤血流と酸素供給を
減らすため、
子宮を一種の
栄養欠乏状態に陥れます。
喫煙妊婦の子は
出生時体重が少ないが、
その後急激に体重が増えて、
過体重率が増加することが
多くの調査で確認されており、
喫煙が肥満しやすい遺伝子活動を
誘発する証拠となっています。

胎生期にニコチンを投与した
動物実験でも、
動脈のまわりに
脂肪組織が増殖して
肥満・血圧上昇が生ずることが
観察されています。

妊娠中にタバコを吸うと、
胎児にニコチンが
送りこまれますが、
このニコチンは
胎生期の未熟な腎臓、
心臓、血圧調節神経の
正常な成長を邪魔して、
出生後血圧を上げ、
肥満となるように
プログラムを変えると
考えられています。