15/6/10「におい」
15/06/10 19:43 
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「におい」

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「におい」について、専門家の論文から抜粋します。

ヒトの新生児はかなり未成熟な状態で出生し、
感覚機能も視覚などはまだ発達途上で調節機能などが十分でない。
発生学的に嗅覚は胎児期から既に機能しており、
ネズミやウサギでは、
新生仔はにおいを頼りに母親の乳首を探し当て
吸乳することが確認されている。

ヒト新生児でも母親の胸部のにおいを他の女性の胸のにおいと識別して
母親のにおいのする方向に顔を向けるという研究があり、
生後間もない頃にはにおいを情報源として
母親を識別していることが示唆されている。

母親の胸のにおいは羊水とよく似ており、
新生児はそのにおいに嗜好性を示すらしい。
母親の子宮の中のにおいに既に影響を受けているのである。
そして、母乳を飲むことで母親のにおいがさらにしっかりと記憶され、
以後(においの源としての)母親への嗜好性がより高まるとされている。

一方母親もにおいによって自分のこどもを容易に識別できる。
特に、
出産後新生児を30〜40分程度胸に抱いて吸乳の刺激を受けた母親は、
そうでない母親よりもにおいだけで自分のこどもを正確に識別できる。
この母親が持つ識別能力は父親や祖父母などに比べて非常に高い。
このことは出産と授乳という母と子の間に交わされる
特別な状況下でのスキンシップがお互いのにおいの学習を促進し、
ヒトの絆として初めに形成される
「母と子の絆」に重要であることを示唆している。

においは多くの哺乳類において
母親がこどもを養育する母性行動の発現にも重要である。
マウスで嗅覚遮断実験を行うと、
出産経験のあるマウスで巣作りや母性行動の障害がみられ、
未経産マウスではさらに仔殺し行動にまで発展してしまう。
仔のにおいは母性行動の発現に重要である。

こどもは始めにおいで母親を学習し、
そのにおい(と源である母親)に愛着を持つ。
一方、
母親のこどもに対する愛情(母性行動)も
こどものにおいによって育まれるのである。

スマホに子守りをさせないで、
おこさんとのスキンシップを大切にしましょう。