17/6/11「ビタミンB1欠乏症」
17/06/11 17:21 
▼タイトル
「ビタミンB1欠乏症」

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暑い季節になってくると、
水分補給と称してイオン飲料を飲む機会が増えてきませんか。

以前このブログでお伝えしましたが、
イオン飲料には糖分が含まれています。
ですから多飲すれば
その分多量に糖分が体に取り込まれ、
その糖分を代謝するために
ビタミンB1が多量に消費されて欠乏します。

ビタミンB1は体内で産生されずその備蓄も限られ、
摂取不足が続くと欠乏症状が発症します。

意識障害・眼球運動障害・失調を3主徴とするWernicke脳症と、
心不全・浮腫・腱反射消失などを特徴とする脚気が
代表的な欠乏症状です。

2010年1月から2015年9月までに診療したWernicke脳症と、
そのうちイオン飲料などの多飲が原因と推定される症例の
全国調査がこのほど実施され論文として報告されました。

その結果33例が、
イオン飲料などの多飲が原因と推定される
ビタミンB1欠乏症と診断されました。

*発症時年齢:中央値15か月(7〜35か月) 2歳未満28例(85%)

*食事摂取状況
・発症前の離乳食:ほとんど摂取せず12例 少量のみ10例
・偏食あり:17例⇒白米以外の副食を摂っていないもの多し

*イオン飲料などの多飲状況
・多飲が始まった時期
 中央値10か月 1歳未満17例 うち4例は生後6か月未満
・多飲を継続した期間
 中央値3.5か月 6か月以上10例
・1日の摂取量 
 1000ml以上25例 2000ml以上4例
・多飲を始めた理由
 感染症罹患11例 
 児が好むため6例 
 水分補給のため4例 
 離乳食が進まないため4例
・多飲した飲料
            区分  エネルギー Naイオン Kイオン
 10例:ブランドA イオン飲料  160    35     20
 8例:ブランドB スポーツ飲料  250    21     5
 3例:ブランドC 乳酸菌飲料  460    2.2    5.1
 2例:ブランドD スポーツ飲料  190    17     2
 2例:ブランドE イオン飲料   180    25     17
ちなみに経口補水液は、
   ブランド@社         100    50    20
   ブランドA社         130    60    20

*全身症状
 嘔吐22例 活気不良20例 浮腫15例 食欲低下15例 体重増加不良13例

*神経症状
 意識障害21例 腱反射減弱14例 筋力低下11例 眼球運動障害10例
 けいれん9例

*転帰
・死亡1例
・後障害あり12例
・後障害の内容
 知的障害9例 運動障害6例 嚥下障害2例
 自閉症スペクトラム障害1例
 眼球運動障害、てんかん 各1例

*考察
・2歳未満の乳幼児が大半
・発症前の離乳食が不十分で偏食を認める
・多飲が始まった時期は生後12か月未満が多く、
 乳幼児の栄養推奨からの逸脱が明らか
・1日の摂取量1000ml以上が大半で、
 食事摂取への影響が推定される
・ビタミンB1欠乏症の転帰は不良
 心不全が急速に増悪し心原性ショックにより1例が死亡

イオン飲料多飲によるビタミンB1欠乏症はまだ十分周知されておらず、
保護者調査では、
イオン飲料が
「健康に良い」
「ビタミンが豊富」
「多量に飲んでも安全」
に賛同する保護者の割合は、
高頻度にイオン飲料を使用しているほど高いです。
 
上記のように、
経口補水液に比べてイオン飲料は、
高カロリー(糖分が多い)
低ナトリウムかつ低カリウムです。

胃腸炎などで一時的に食事・水分摂取が不足する場合は、
経口補水液の摂取をお勧め致します。
そして日常生活においては、
母乳・乳児用ミルク
バランスのとれた食事を摂取し、
その際の水分補給には、
カロリーのない(糖分のない)水分を飲みましょう。