17/10/22「経口補水療法」
17/10/22 16:07 
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「経口補水療法」

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台風21号(ラン)の影響でどんより曇った日曜の午後、
皆様いかがお過ごしでしょうか。

福岡ヤフオクドームでは、
ソフトバンクと楽天が日本シリーズ進出を懸けて戦い、
ソフトバンクが勝利しました。
一方セリーグの方は雨天順延となりました。

さて、
RSウイルス感染症はまだ流行中ですが
ピークは越した模様です。
そんな中、
感染性胃腸炎は高水準で推移しています。

日本小児救急医学会は、
2017年版の小児急性胃腸炎診療ガイドライン
を公表しました。

脱水の重症度を臨床症状から評価して、
治療方針をたてます。

以下、
重度の脱水(体重の9%を超える喪失)の症状です。

・精神状態;感情鈍麻、嗜眠、意識不明
・口喝;ほとんど飲まない、飲むことが出来ない
・心拍数;頻脈、ほとんどの重症例では徐脈
・脈の状態;弱い、または脈がふれない
・呼吸;深い
・眼;深く落ちくぼむ
・涙;なし
・口、舌;乾ききっている
・皮膚のしわ;戻るのに2秒以上かかる
・毛細血管再充満
 (爪を押したら白くなりますが、
 圧迫を解除してからもとのピンクに戻るまでにかかる時間)
 戻るのに2秒以上かかる
・四肢;冷たい、斑状、チアノーゼあり
・尿量;ほとんどなし

重度の脱水が明らかである場合はショックの前兆と考えて、
静脈輸液療法を優先することが推奨されています。

時々、
嘔吐や下痢がさっき始まったばかりのおこさんの保護者から
点滴することを要求されます。
しかし、
ほとんどの場合重度脱水状態ではありません。

昨今私は上記のような
重度の脱水状態のおこさんをほとんどみたことはありませんので、
重度の脱水以外、
軽度〜中等度脱水の場合の初期治療は
世界的にも経口補水療法が標準治療となっています。
今回のガイドラインでも同様です。

経口補水療法は、
嘔吐や下痢の症状が始まったら、
速やかに自宅で開始することが推奨されます。

現在日本で入手可能で
欧米の勧告レベルに合致する経口補水液は、
病者用食品の表示許可を取得している
経口補水液オーエスワン(OS-1)と
医療用医薬品であるソリタT配合顆粒2号のみと
ガイドラインでは紹介されています。
後者は処方箋が必要ですが、
OS-1は薬局等で購入できます。

*経口補水療法のプロトコール
「世界保健機関(WHO)提唱」

〇初期補液(第1段階)
4時間で体重(s)×75ml投与する 
もしくは以下の通り投与する
・投与量(ml)
 4か月未満;200〜400
 4〜11か月;400〜600
 12〜23か月;600〜800
 2〜4歳;800〜1200
 5〜14歳;1200〜2200
 15歳以上;2200〜4000

〇維持療法(第2段階)
 排便のたびに投与する
 2歳未満;50〜100ml
 2〜10歳;100〜200ml
 年長児および成人;飲みたいだけ

〇投与方法
 乳幼少児はスプーンやコップで与える。
 哺乳瓶は使うべきではない。
 2歳以下の小児では、
 1〜2分ごとにティースプーンで与える。
 年長児ではコップから直接、頻回にすすってもよい。
 
ただし、
初期の段階では嘔吐を繰り返すことはしばしばです。
そういう場合ガイドラインでは、
5mlを5分ごとに投与するとなっています。
5mlとはティースプーン1杯、
ペットボトルのキャップ3/4程度の量。
補水液を嘔吐しても、
5〜10分待って補水液を与えていきます。
嘔吐が治まってくれば、
投与間隔を徐々に短くしていきます。

もちろん実際は、
おこさんはきつくて気持ち悪くてぐずって
飲みたがらない場合も多いと思います。

ですがそこはなんとかなだめて、
5mlぐらいを
(ペットボトルのキャップ3/4程度なのでほんのちょっとずつ)
正確に時計を見ながら5分毎なんて思わずに、
そのぐらいのペースで、
ゆっくり根気よく与えていきましょう。

台風21号は、
12時現在四国の南の海上に位置し、
これから北東の方向に進み、
今夜九州に接近し、
明日未明に
東海地方に上陸する可能性が高まってきました。
熊本は強風注意報がでていますので、
どうぞご注意ください。