19/3/10「卒業」
19/03/10 15:46 
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「卒業」

▼本文


雨模様の日曜日の午後のひと時。
皆様如何お過ごしでしょうか。

3月は卒業シーズン。
すでに中学・高校の卒業式は終了しました。
卒業生ならびに保護者の皆様、
御卒業おめでとうございます。
どうぞ健康に留意され、
多くのことを学びながら、
それぞれのペースで
将来の目標に向かって進んでください。
我々大人は温かい目で見守って参りましょう。

さて、
前回九州大学のあかちゃんについての研究報告をご紹介しました。
今回も同じグループからの研究内容をご紹介します。

―1歳半のあかちゃんは「気づいていない」大人を気遣う―
という結論を導き出しました。

対象:生後9か月、1歳、1歳半のあかちゃん各24名
方法
保護者の膝の上に座ったあかちゃんに2人の成人女性の動画を見てもらい、
視線計測装置を用いてあかちゃんが画面のどの部分をどんな順番で見たかを測定

具体的な方法

動画1
2人の成人女性(A,B)が横に並んで座っている。
2人の前に机があり、
Aの前に2つのおもちゃが置いてある。
@まず2人はうつむいており、
その後顔を上げて正面を向く。
A次に2人はお互い顔を合わせる。
BそしてAは一つのおもちゃを見る。
その時BはAの顔を見たままの状態で静止している。

動画2
2人の成人女性(A,B)が横に並んで座っている。
2人の前に机があり、
Aの前に2つのおもちゃが置いてある。
@まず2人はうつむいており、
その後顔を上げて正面を向く。
A次に2人はお互い顔を背ける。
BそしてAは一つのおもちゃを見る。
 (動画1と同じおもちゃ)
その時BはAに顔を背けたままの状態で静止している。

研究グループは、
2つの動画のBの場面で、
あかちゃんの注意がどこに向けられるかに着目しました。

動画1では、
あかちゃんは月齢に関わらずAがみているおもちゃに視線を向けました。

動画2では、
9か月と1歳のあかちゃんはAがみているおもちゃに視線を向けました。
1歳半のあかちゃんはBに視線を向けました。

この結果より研究グループは、
1歳半のあかちゃんはBがおもちゃの存在に気づいていないことを
「気遣っている」と解釈しました。

動画1ではBは直接おもちゃを見てはいませんがAに顔を向けています。
お互いを見つめ合う行為は共同注意と呼ばれ、
第三者がその2人の気持ちを察するヒントになります。
あかちゃんは2人ともおもちゃに気づいている
(2人の間に注意や知識のギャップはない)と解釈しました。

動画2では、
BはAのおもちゃへの注視に気づいていないかもしれないし、
他のことに注意を向けているかもしれません。
1歳半のあかちゃんは、
「気づいていない」Bに自発的な関心を寄せ、
それが視線に反映されたと解釈しました。

研究グループは、
1歳半のあかちゃんは
「他者同士のやりとりにおける心的状態の共有」に対する「気遣い」
を発揮する高い感受性をもっていると考えました。
そして、
あかちゃん自身が情報を発信し、
周りの様子に気をもんだりしていることを踏まえた上で、
子育てや教育の現場に臨むことには、
大きな意義があると考えていると記しています。

実際の日々の生活では時間に追われて
じっくりとあかちゃんに対応できない場合もあります。
あるいはスマホに気を取られていることもあります。
そんな時に、
あかちゃんが何かを察して何かを訴えようとしているかもしれないと、
大人の私達も気づいてあげなければいけない、
という気持ちを持とうと思いました。