20/3/7「母の語りかけ」
20/03/07 16:29 
▼タイトル
「母の語りかけ」

▼本文


新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。

今回の感染のことで
『クラスター』という単語をよく耳にするようになりました。
英語で「房」「集団」「群れ」のこと。

一部の地域で小規模な患者クラスター(集団)が発生しています。
このクラスター対策による感染拡大防止がひとつの課題のようです。

皆さんご存知のように、
・屋内の閉鎖的空間
・人と人が至近距離
・一定時間以上交わる
このような条件を満たす場所で、
一人の感染者が複数人に感染させた事例が報告されています。

ライブハウス
スポーツジム
屋形船
ビュッフェスタイルの会食
雀荘
などが挙げられています。

感染が終息するまで、
できるだけこのような条件の場所には
近づかないようにすることは大切です。

医院近隣のスポーツジムの駐車場は、
ここ最近停車中の車の数がぐっと減っています。
感染を警戒されているのでしょう。

私はここではありませんが、
何度も挫折を繰り返しながら
細々と入っているスポーツジムがあるのですが、
私の場合、
去年のインフルエンザシーズンから足が遠のき(例年の事ですが)、
今回の件でいよいよ幽霊会員となっています。
お腹周りが気になっているので、
外をゆるりと歩くぐらいはせねばと思っています。

さて話題はガラリと変わります。
これまであかちゃんは、
白紙の状態で生まれてくると思われていましたが、
脳科学の進歩により
その脳機能は考えられていた以上に発達していることが
次々に明らかにされています。

昨年8月、
慶応大学などの研究グループは、
生後2〜7日の新生児が母親の語りかけを聞くことで
脳の前頭部と側頭部の脳機能結合を強めることを見出しました。
他者の声でなく、
母親の声という胎児期に頻繁に聞いた音声で言語野がより強く活性化し、
さらには言語回路の結合が強くなることを世界で初めて報告しました。

*研究方法
 
 正期産新生児37名(生後2〜7日)に対し、
 ・母親の声
 ・他者の声
 それぞれで乳児向けの語りかけをした音声を聞かせた際の
 脳活動と脳機能結合を近赤外分光法で計測した。

*結果

・母親声では他者声と比較して、
 言語野など他4部位で強い反応がみられた。
 これらの脳部位において、
 声を聞かせた直後に活性化する脳機能結合を解析したら、
 母親声ではより多く・強い脳機能結合が見られた。

⇒左下前頭回(言語野)から側頭部の縁上回・上側頭回(後部言語野)
 に多くの結合が見られた。
 (他者声の場合は前頭部内の短い結合しか見られず)

⇒前頭―側頭部結合は成人でみられる言語回路で、
 新生児でも胎児期によく聞いていた音声を聞くと
 言語回路が活性化することが示唆された。

・母親声では、
 右上側頭回(声の認識に関わる脳部位)から
 多くの部位への結合がみられた。
 (他者声では結合は全く見られず)

⇒新生児は母親声を認識した上で、
 前頭部につながることによって
 愛着や感情など別の認知処理を行っていることが示唆された。
 
*研究の成果
 
 新生児は胎児期からすでに母親声により母国語を学習していて、
 その慣れ親しんだ声で言語回路が促進され、
 他者の声など社会的コミュニケーションに必要な
 脳回路が活性化することを示した。
 生後は母親だけでなく
 慣れ親しんだ特定の養育者とのコミュニケーションによって
 同じような脳回路が活性化することが考えられる。

*この研究の意義
・未発達と考えられていた新生児の音声言語処理における
 前頭前野機能が比較的成熟している。
・特定の養育者の語りかけが乳児の言語や社会性の発達を促す

 以上のことを脳科学的に示した。

ママのおなかの中のあかちゃんも、
すでに外の世界の音を感じているのだなあと認識させられました。
そしてその声が、
優しい語りかけ
怒鳴り声
泣き声
などの違いで、
おなかの中のあかちゃんはどういう反応をするのでしょうか。
また、
生れたばかりのあかちゃんも然り。
さらには、
いろいろな音にどんな反応をしてどういう影響を及ぼすのか。

そして、
生れてすぐから声を聞くだけではなく、
愛情や感情などの認知処理も行っているようなので、
胎児期に慣れ親しんだ声が
産後すぐからぷっつりと途絶えた場合、
どういう影響をあかちゃんに及ぼすのだろうかと、
まだまだこれからの研究成果を待ちたいと思います。

妊娠中、
そして生まれてすぐから、
周囲の皆さんはあかちゃんに
優しく語りかけてあげましょう。
きっとあかちゃんは安心することでしょう。