20/3/14「音声模倣」
20/03/14 18:04 
▼タイトル
「音声模倣」

▼本文


他者の音声をまねる「音声模倣」は、
言語獲得において重要な役割を果たすと言われていて、
ヒトは生後5か月頃までに
「あ」「い」「う」といった母音の音声を模倣し始めることが
これまでの研究でわかっているそうです。

しかし、
他者からどのような情報が
音声模倣を促進する鍵となるかは
わかっていませんでした。

京都大学の研究グループが、
生後6か月児を対象に、
発話者の口を見る傾向が強い乳児ほど音声模倣を行い、
発話者が乳児とアイコンタクトをすると
音声模倣が促進される、
という新たな事実を発見しました。

実験@ 生後6ヶ月児46名を対象
「あ」「う」を発する発話者の顔に対する
視線反応と音声模倣反応を記録した。

a)音声模倣時にどこを見ているか
b)実際にどの程度音声模倣を行うか
の2点に着目した。

・方法
発話者があかちゃんに対して真正面を向いた顔(正立条件)
上記の顔を上下180℃回転させた顔(倒立条件)
この2種類の顔のどちらかをモニター上に提示して、
同時に発話音をスピーカーを通して聞かせた。

・結果
倒立条件よりも正立条件を提示したときに、
乳児は音声模倣を頻繁に行い、
さらに正立条件においては、
発話者の口唇部を長く注視した乳児ほど、
音声模倣の頻度が高かった。

実験A 生後6ヶ月児23名を対象

・方法
アイコンタクトをしている発話者(直視条件)
目をそらしている発話者(逸視条件)
この2種類の顔のどちらかをモニター上に提示して、
同時に発話音をスピーカーを通して聞かせた。

・結果
逸視条件よりも直視条件を提示したときに、
乳児は音声模倣を頻繁に行い、
さらに両方の条件ともに、
発話者の口唇部を長く注視した乳児ほど、
音声模倣の頻度が高かった。

*考察
乳児はただ自動的に聴覚情報を模倣しているだけでなく、
発話者の口の動きやアイコンタクトといった、
他者の顔情報からの影響を強く受けていることが
この研究からわかった。
音声に関連した口の動き
(視覚と聴覚情報が同期して知覚される情報)
を積極的に利用して、
他者の視線方向から
「自分」に注意が向けられていることを知覚することで、
乳児の音声模倣は促進される。

研究者は、
言語発達の支援法として、
乳児の顔を見つめながら
発声を誇張して働きかけることが
極めて重要であると述べています。

あかちゃんが何か声を発している時、
笑っている・泣いている時、
真正面から口を大きく動かしながら
お話しかけしてみましょう。
きっとあかちゃんは何を言っているのか、
わかっていることでしょう。

さて、
花粉症のシーズンはもうしばらく続きます。
外にお出かけの際は、
十分お気を付けください。